正誤表:東京大学工学部総合研究機構ナノマテリアセンター藤田昌大先生のご好意による。

制御工学の基礎,電気電子情報通信基礎コース,丸善(株),定価2,800円(税別)
まえがき

 この教科書は,大学の2〜3年生を対象とした制御工学の講義に使用することを目的に執筆したものである.従って,制御工学という科目で学んでおくとよいと思われる項目をひととおり含むように気をつけ,また,必然的にわかりやすく書くように留意した.1回くらい欠席してもこの教科書を読むことによって,追いつくことができるようにしたつもりである.(もちろん欠席を奨励しているわけではない.)
 具体的には,

(1)制御工学を初めて学ぶ学生のために,週1回程度の講義で使う教科書として使えること.
(2)制御工学を生涯の専門とはしないけれども,どんなものか学んでおきたい人にも津使えること.
(3)新しい制御技術を現場にどう導入すればよいのか悩んでいる人に,ヒントを与えること.

というような項目を頭においた.
 著者らはいわゆる制御理論の専門家ではない.モータやロボットの制御,工作機械,電力システム,電気自動車などの,応用を専門とする電気工学者である.従って,どうしても,使いものになりそうな制御理論に目が行く.
 執筆にあたっては,茅 陽一著「自動制御工学」(共立出版,昭和44年初版,現在は絶版)をかなり参考にした.引用に近い形で用いた部分もある.この本以後にも多くの制御工学の教科書が出版されているが,茅先生の教科書を読み進んでいくとその奥深さに感銘を受ける.本書はそのかおりをまねたいと思った.目標は達せられたとは到底いえないけれども,何かを感じてほしいと思う.
 応用制御工学の最後にモーションコントロールという章を設けた.難解な制御理論がいい成績をおさめているわけではない.使える制御理論の応用例として目をとおしていただければ幸いである.
 出版の都合で全体を2冊に分けることにした.1冊目(制御工学の基礎)がいわゆる古典制御,2冊目(応用制御工学)が現代制御とその後である.半年に1冊ずつ用い,1〜1.5年間で全体が終わるようにすれば,分量としてはちょうどよいと思われる.
 なお,本書は,実際に講義に使ってきた著者らのメモ,手書きあるいはコピーした資料,学生諸君のとった講義ノートなど,手元にあったものを取捨選択しながら作成した.従って,原典が明らかでなくなったものが多々ある.読者の方でお気づきの点があれば,著者までお知らせいただければ幸いである.

目  次

1.序論
 1.1  巧妙なメカニズム
 1.2  自動制御の定義
 1.3  フィードバック制御システムの構成
 1.4  制御の方法
 1.5  制御システムの例
 1.6  制御システムの分類
 1.7  閉ループ制御と開ループ制御
 1.8  制御工学の歴史

2.システム動特性の表現
 2.1  信号伝達と状態遷移
 2.2  動作点まわりの線形化
 2.3  線形システムの表現
 2.4  ラプラス変換法の基礎
 2.5  ブロック図とその合成
 2.6  特性の計測法

3.制御システムの安定性
 3.1  線形システムの安定性
 3.2  ラウスの安定判別法
 3.3  ナイキストの安定判別法
 3.4  フィードバック系の安定度指標

4.フィードバック制御系の基本特性
 4.1  入力追従特性と外乱抑圧特性
 4.2  定常誤差と誤差係数
 4.3  2次系の過渡応答
 4.4  2次系の周波数応答
 4.5  高次系の代表根

5.線形フィードバック系の補償
 5.1  フィードバック制御系設計の基本指針
 5.2  直列補償とフィードバック補償
 5.3  ニコルズ線図を用いた制御系設計
 5.4  根軌跡を用いた制御系設計
 5.5  直列補償とPID調節計
 5.6  フィードバック補償

6.非線形系の取り扱い
 6.1  非線形系の例
 6.2  記述関数
 6.3  リミットサイクルの計算
 6.4  オンオフ制御系
 6.5  位相面解析


正誤表:東京大学工学部総合研究機構ナノマテリアセンター藤田昌大先生のご好意による。

応用制御工学,電気電子情報通信基礎コース,丸善(株),定価2,900円(税別)

目  次

1.状態空間におけるシステムの取り扱い
 1.1  最短時間制御
 1.2  状態変数と状態方程式
 1.3  状態方程式から伝達関数への変換
 1.4  伝達関数から状態方程式への変換
 1.5  諸種の基礎項目
 1.6  時間応答解析
 1.7  状態フィードバックと極配置
 1.8  最適制御
 1.9  最適レギュレータの性質
 1.10 状態変数オブザーバとカルマンフィルタ

2.サンプル値制御システムの基礎
 2.1  空間量子化と時間量子化
 2.2  サンプリング動作の数学的表現
 2.3  サンプリングを含むシステムの取り扱いとz変換
 2.4  z変換の数列解法への適用
 2.5  I制御と数列の変換
 2.6  サンプル値制御システムの連続時間システム近似
 2.7  サンプル値制御システムの安定性
 2.8  有限整定法とデッドビート応答
 2.9  アリアス雑音とその補償
 2.10 z変換の欠点と差分変換

3.適応制御とロバスト制御
 3.1  適応制御とロバスト制御の違い
 3.2  適応制御
 3.3  H∞制御の考え方
 3.4  H∞制御で扱う諸種の問題
 3.5  H∞制御の定式化と一般化プラント
 3.6  H∞最適制御問題の解
 3.7  μシンセシスとロバスト性能

4.モーションコントロール
 4.1  モーションコントロールとは何か
 4.2  加速度制御と外乱オブザーバ
 4.3  2自由度ロバストサーボ系
 4.4  ロバスト速度サーボ系
 4.5  ロバスト位置サーボ系とマニピュレータ制御
 4.6  環境変動にロバストな2自由度力制御系
 4.7  瞬時速度オブザーバ
 4.8  慣性モーメントの同定
 4.9  振動抑制制御
 4.10 共振比制御
 4.11 遅い共振比制御