
モータ実用ポケットブック「自動車用モータ技術」
堀 洋一・寺谷達夫・正木良三編 定価1,900円(税別)
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まえがき
本書の一番の特長は,世界をリードする自動車各社の最新のモータ技術が,開発の当事者によってきわめて生き生きと紹介されていることである。おそらく,自動車用電気モータに焦点を当てて,これだけ詳細かつ広範に,しかも楽しく読める本はなかったであろう。
いまや,電気モータで走っていない列車でも,まちがって電車と呼ぶ人が少なくない。鉄道パワートレインの主役は完全に電気モータである。自動車においてもエンジンと電気のハイブリッド化が進み,近未来の車は間違いなくその多くが電気で走るようになる。エンジンがかからないなどという慣用句は死語になるだろう。そして,その次には電気飛行機の時代がくる。
電気駆動への流れは時代の趨勢である。21世紀初頭,ハイブリッド車が市場での地位を確立し,将来の燃料電池車が有望視されている。駆動用モータには何が適しているのか,電源電圧はどうなっていくのか,などなど,いま,共通認識ができつつある。
自動車用モータは,補機用の小型モータと駆動用主機モータの2つに大別される。
小型モータは,大衆車で約20個,高級車では約60個が使われる。さらに最近では100個を越える例もあり,将来とも多用されていくことは明白である。数だけでなく性能面においても,たいへんな高効率化,低騒音化が達成されているが,個数が多いので,とにかく軽く小さくすることが最大の課題である。
近年の主機モータの発展は著しい。アクチュエータとして見た出力/重量比はすでにエンジンに見劣りしないし,まだまだ天井も見えない。エネルギー源である電池や周辺機器の改善が急務であることは論を待たないが,モータにおいては,さらなる高効率化,回生ブレーキなどの省エネがキーポイントである。そして,電気モータならではの高い制御性が新しいメリットとして控えており,付加価値の高い新しい機能の実現が期待できる。
このように,電気モータは近未来の車において主役を演ずるにもかかわらず,いままで自動車用モータに着目した成書は見あたらなかった。本書は一流の,すなわちきわめて多忙な執筆陣をそろえ,編者3人の強引なイニシアティブによって驚くほど短期間で作り上げたものである。基本的なことがらから,自動車各社のきわめてホットな最新情報までいきなり盛り込まれているので,お見逃しなきよう願いたい。
本書のターゲットは,必ずしも電気工学が専門ではない人,会社に入ったら電気モータに関わることになって困っている人,これから自動車に関わっていきたい学生諸君である。楽しく読めるが本質を押さえた本になったと自負している。
本書を出すにあたっては,日刊工業新聞社の清水崇氏のお世話になった。この場を借りて深くお礼を申し上げたい。
編者:堀 洋一・寺谷達夫・正木良三